小町碧インタビュー 英国で活躍するヴァイオリニスト

記・マイク・サリバン

自己紹介をお願いします。日本の出身地はどちらですか?

ロンドンを拠点に活動するヴァイオリニストの小町碧です。主にソロや室内楽のコンサート活動の他、ワークショップ等の指導もしています。今年4月にファースト・アルバムをリリースしました。

一応、川崎出身なのですが、実は人生の大半を海外で過ごしてきました。3歳の時に家族で香港へ引っ越し、その後、スイス、イギリスへ移りました。15歳の時に両親は日本へ帰国したのですが、私はロンドンで勉強したいという願いがあったので、イギリスに残りました。それ以来ずっとロンドンに住んでいます。2012年に英国王立音楽院を卒業しました。

サイモン・カラハンと共演しているデビュー・アルバム、「Colours of the Heart」について教えて頂けますか?

「Colours of the Heart」は2014年4月にリリースされました。「ディーリアスとゴーギャン」というテーマを基に、ディーリアス、ドビュッシ―、ラヴェル、グリーグの作品を収録しました。スタインウェイ・ピアニストのサイモン・カラハンとは2012年より様々なコンサートで共演しています。サイモンや、プロデューサーのジェレミー・ヘイズ、素晴らしいチームと共にこのアルバムを録音できて光栄でした。

‘Colours of the Heart’: Ich Liebe Dich by Grieg

このアルバムは「ディーリアスとゴーギャン」というテーマが、どの様に関係しているのですか?

「ディーリアスとゴーギャン」は、元々2012年に企画したコンサート・プロジェクトでした。英国作曲家・ディーリアスと画家・ゴーギャンの交流が、どの様に同時代のアーティスト達の作品に反映されているのか、という研究テーマを基に、プログラムを作りました。

私はこのプロジェクトを始めるまでディーリアスの音楽を全く聞いたことがなかったのですが、ロンドンのコートールド美術館にあるゴーギャンの「ネバーモア」を見た際にミステリアスな色彩から強い印象を受け、後にディーリアスがこの絵の最初の所有者であったということを知りました。ディーリアスのヴァイオリン・ソナタ第3番を初めて聴いた時、ハーモニーの音色がまるでゴーギャンの色彩を描く様だ、と感銘を受けました。

そして実際、ディーリアスとゴーギャンの間では興味深い交流があったことがわかりました。彼等を中心にムンク、ラヴェル、グリーグといったアーティスト達の輪が広まっていったのです。この研究を基に、彼等の間で共感されていたインスピレーションを、コンサート・プログラムを通じて表現したいと思いました。「Colours of the Heart」はこのプログラムを収録しています。

http://www.midorikomachi.com/

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アルバムはどの様な反響がありましたか?

世界各地からメッセージを頂いたり、良い批評を頂きました。CDリリースの週にBBC Radio 3の生放送番組にてディーリアスとラヴェルを演奏したのですが、その直後、今までディーリアスの音楽を知らなかった方々が、ディーリアスの音楽に興味を持った、というご感想を頂きました。このアルバムをリリースする一つの目的が、ディーリアスの音楽を広く紹介することだったので、この様なコメントを頂いて本当に嬉しかったです。

もし次にソロアルバムをリリースするとしたら、どの様な曲を収録したいですか?

英国作曲家の作品を録音したいと思っています。まだあまり知られていなくても、素晴らしい曲がたくさんあります。ディーリアスのソナタ第2番も、いつか録音したいですね。実は、セカンド・アルバムの予定があるのですが、今のところ内容は秘密です!

‘Colours of the Heart’: Sonata for Violin and Piano No.3 by Delius

日本人としての経歴は、演奏や音楽の解釈に影響があるのでしょうか?

日本の作曲家の作品を演奏しているときに、私の日本人としてのアイデンティティーが現れていると思います。ある意味、この時しか影響していないと思います。武満徹が「間」を西洋音楽で表現した様に、日本の音楽には特別な魂があり、私はこの精神を感じとって演奏したいといつも思っています。

2011年に、「音楽における英国と日本の文化交流」というプロジェクトを企画したのですが、これをきっかけに日本人作曲家の作品を英国で紹介することになり、これからも日本の作曲家との交流を深めることができたら良いなと考えています。

日本人音楽家が海外で活動していくのは、どの様なチャレンジがあると思いますか?

まず英語でのコミュニケーションができなければ難しいと思います。音楽は世界共通の言語ですが、良い音楽を作っていくには作曲家、音楽家、聴衆との交流は不可欠だと思います。

日本ではどれぐらいの頻度で演奏されていますか?又、英国で日本人音楽家とは演奏されていますか?

日本では年に1、2回、コンサートのために帰国しています。英国にいる日本人音楽家とは様々な場で共演してきました。英国王立音楽院に在学中、日本人留学生もたくさん居たので、彼等は仲良い友達でもあり、同僚でもあります。

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今後、どの様なコンサートを予定されていますか?

11月14日に、横浜イギリス館でレクチャー・コンサートがあります。「英国の風景と民謡」から感銘を受けた英国作曲家達、ヴォーン・ウィリアムズ、ホルスト、ブリテンについて、演奏と解説をします。ピアニストの加納裕生野さんとの共演も楽しみです。英国の作曲家を日本で広く紹介していくために、この度、日英協会とブリティッシュ・カウンシルと共にこの様なプロジェクトを企画することになりました。

http://www.japanbritishsociety.or.jp/japanese/modules/news/article.php?storyid=312

小町さんのヴァイオリンについて少しお話し頂けますか?とても美しい楽器ですね。

私のヴァイオリンは1920年、モダン・イタリアンの楽器です。100歳に近い楽器ですが、16世紀まで遡るヴァイオリン製作における歴史の中では、まだ「モダン」と呼ばれています。良い楽器は年を重ねると共に音が成熟し、弾きこまれていくと更に深い音が鳴るようになります。ヴァイオリンはまるで人間の声の様で、それぞれ「性格」があるので相性の合った楽器と出会うことは、ヴァイオリニストにとってとても大切なことなのです。

From ‘Colours of the Heart’: Sonata for Violin and Piano by Debussy

日本にはどれぐらい一時帰国されていますか?又、日本の一番好きなところは?

日本には年に2回ぐらい帰ります。日本で一番好きなところは温泉です。去年は、河口湖の温泉にて、富士山の美しい絶景を堪能しました。又、温泉に行くと旅館の美味しい食べ物があるので、それも楽しみの一つです。温泉と食べ物で思う存分リラックスできるのは、きっと他の国に行ってもできない事だと思います!

日本の伝統的な工芸品は小町さんにとってどの様な存在ですか?又、一番好きな工芸品はありますか?

私は幼い頃から海外で引っ越しを繰り返していましたが、どこへ行っても必ず持っていた日本の工芸品がいくつかあります。なので、私にとって工芸品は「心のふるさと」の様な物だと思っています。未だにコンサートで海外へ出張に行くときは風呂敷を使っています!美しいデザインですし、洋服を包むのにとても便利です。

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もし工芸品を作るとしたら、何を作ってみたいですか?

陶磁器に挑戦してみたいですね。日本食はプレゼンテーションも芸術的なので、美しい食器によって、より食べ物も美味しく味わえると思います。あとは、お茶が大好きなので茶瓶も作ってみたいです!

最後に、日本の文化に興味がある方々に一言お願いします。

伝統的な歴史とモダンな街、二つのコントラストがある日本へ是非行ってみてください。日本の文化を通じて日本人と外国人の交流が更に深くなれば良いなと思います。

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Michael Sullivan

Michael Sullivan is the editor for the online magazine and is responsible for bringing together the great content that we offer our readers. He can normally be found writing for several UK and Japanese magazines, as well as working as a translator.